MGS−01という存在

大きな夢を見させてくれた一台 MGS−01
すでに公道バージョンの市販化は見送られたが、自分にとってのカリスマ、憧れの存在
ここでは登場を期待して待ち続けた数年間のヒストリーを紹介します。


02年のミュンヘンショウで発表されたMGS−01にはかなり衝撃を受けた。

「DUCATIはサラブレッド、GUZZIは農耕馬」と言われているけど、これはとても洗練されている。
エキパイの取りまわしは916も目じゃないくらいセクシーだ。

でも形がカッコイイだけなら他にも選ぶものはある。このエンジンと組み合わさるから意味があるのだ。
このカッコ良さでエンジンにも独特の味わいがあるんだから。このスタイルでドコドコ言うんだぜ。アイドリングで車体がブルブル震えるんだぜ。
この風貌と豪華装備に、前時代的な空冷縦置きVツインとシャフトドライブ。 このアンバランスがイイのだ!

スポルト系OHVではなくデイトナ系OHC4バルブ。 だからソコソコには速いと思うけど、それでも国産4気筒やドカに比べると間違い無く遅い。
でもそんなことはどうだってイイ。 他では有り得ない存在なんだから。
03/8/3
03年8月 まだプロトタイプだけど、ついにMGS−01が走り始めた。
保安部品は一切無い状態。CORSAと呼ばれるレース仕様。 排気量は1225cc。
思ったより早く走り出したな。 開発が急ピッチで行われていることが伺える。
CORSAと呼ばれるこのレース仕様は04年春、 そして注目のSERIEと呼ばれる公道仕様は04年10月デビューと発表された。
一番心配だったのは保安部品。 ナンバープレートはどうすんのよ!って感じ。 スタイルを台無しにするのは目に見えてる。
04/2/12
グッツィエンジンを積んだオリジナルフレームのスペシャルバイクを造るコンストラクター 「ゲッツィ&ブリアン」
MGSはそのゲッツィ氏の強力を得て開発されているらしいけど、そこのHPで面白い写真を見つけた。
今まで外装をはがした写真は無かったから、フレームやタンクはベールに包まれたままだった。
しかしこの写真によってかなり車体の構成が分かった。これはスクープ写真と言ってもいいくらいの内容だ。

写真から判断するに、基本骨格は現行グッツィに良く似たモノバックボーンフレーム。
ステアリングヘッドからスイングアームピボット付近まで直線に伸びる角パイプは、
ちょうど、レプリカ系のアルミツインチューブを1本にして真ん中に持ってきたみたいな感じだ。
一人乗り専用だからマフラーを支えるだけの役割しか持たないシートレール後部は、シンプルなパイプワーク。

タンクは手作り感たっぷりの四角い箱。これは実験段階の間に合わせかもしれない。
エアフィルターがフレームの上にちょこんと乗ってる。予想するに、前方からフレームを通って新気が導入され、
エアフィルターを通ってその上にかぶさるはずの複雑な形状のエアボックスからインジェクションへという空気の流れ。
ということは...エアフィルターの交換はメチャメチャ面倒くさそうだぞ。
まずはアッパーカウルをはずし、タンクカバーとシートカウルが一体になっている外装をはずし、エアボックスをはずして
はじめてエアフィルターとご対面できるわけだ...。

しかし見れば見るほどすごい構成だな。機能やデザインのために整備性など無視したつくり。
要するにこれはハンパな心構えじゃ手を出せないスペシャルバイクなわけだ。
一番知りたかった部分がここ。あのお尻にテールランプやナンバーはどうやってつくんだろう。
その疑問に対するヒントがこの写真。はじめてお目にかかるテールランプを伴ったMGSのお尻。

こっ、これは!
LEDを使うことによって可能になった極小テールランプが、これまた目立たぬように配されたステーによって支持されている。
その下にリフレクター(反射板)もある。デザインの邪魔をしないように気を使っている苦労が見える。すごい...!
でも配線はどうする?熱くなるマフラーのすぐ近くっていうのもマズいでしょう。
多分ウインカーはステーから横に伸びると思う。できればシートカウルにビルトインして欲しいところだ。
04/3/15 輸入代理店の福田モーター商会の、ある営業の方と少しだけ話をする機会があった。
当然詳細はまだ全く分からないのだが、2004年の秋に公道バージョンが発表になるとの噂は、あまり当てには出来ないとの事。
もしかしたら2005年の秋になる可能性も高いと言う。

そして「価格はおそらく300万は下らないでしょう」と...。 300万! 目がくらむ思いだった...高い...平凡な庶民にとっては高すぎる。
いや、確かに200万との噂は少々楽観的すぎるとは思ったんだけど...。
04/6/3 海外メーカーとしては最大規模と言っていいメーカーであるアプリリアが大変な財政危機にあると言う。 
以前から財政危機の噂はあった。 そこで一番気になるのはアプリリアの傘下にあるモトグッツィ。
アプリリアに買収されて以来開発スピードも上がって、順風満帆に見えたんだけど。

MGS−01はどうなってしまうのだろう...そう考えると気が気ではない。詳しい状況が知りたい。早く安心したい。だが情報が無いのだ。

アプリリアは資本が他の企業に移るらしい。 そうなると無駄なブランドは次々切り捨てられる可能性が高い。
そこでモトグッツィを買い取る意思を示しているのがドゥカティ。
ドゥカティは自身が持たないクルーザーのジャンルに目をつけて 手を上げたらしい。
となると...ドゥカティの得意とするVツインスーパースポーツにバッティングするMGS−01は切り捨てられるではないか!
04/10/6 ピアジオのアプリリア買収が決定した。
これでアプリリアはどん底の財政難から救われ、RSVミッレ や モトグッツィの各車は 生き続けることができそうだ。

さて、2年前のミュンヘンショウでMGS−01と共にコンセプトモデルとして発表されたグリソの市販バージョンがミュンヘンで発表された。
MGS−01はいまだ保安部品が装着された現実味のあるモデルは発表されず、市販は06年と発表された。
当初04年の発売が噂されていたが、2年も先延ばしになってしまったわけだ。
05/2/4
04年のインターモトでレーサーの市販最終型が展示された。
1年以上前のプレス向けの試乗会から今まで何に時間がかかったのか分からないが、とにかく正式に登場となったわけだ。
それに伴って某雑誌に多数の写真と共に記事が載ったのだが、その中に 「あれ?」 っていう表現があった。

「2002年の試作車の時はヘッドライトが装着されており、その時点では公道用モデルの考えもあった事が伺える」...........

なんだってぇ〜!? 「公道用モデルの考えもあった」... 「も」ってなによ、 「も」って...
そもそも公道用モデルが大前提で、まずはレーサーが限定車として少数生産される、っていう話だったはず。
いつのまに 「レーサーだけ」 「でも昔は公道用も考えられてた」 にすり変わったんだ?

こういうレーサーって市販車があって初めて意味があると思わない?
昔からF−1なんかと違って、二輪のレースは市販車と密接な関係にあった。
二輪レースで一番尖ってる 「GP500」 や 「MotoGP」だって、それをイメージさせる市販車は必ずあった。
だからこそ それらが速く走る姿に憧れを抱けるわけだし、レースのときめきは日常にもフィードバックされるのだ。
市販車を全くイメージさせないバイクがレースを走っても夢がないではないか。

大体ドゥカティや日本製4気筒を相手に勝てる見込みが少ない縦置きV−ツインのレーサーだぞ。
単純に勝つことを目指すには厳しすぎる。
かといって一般市販車が無いなら 「同じ車両に乗ってる人に夢を与える」 こともできない... どぉせぇっちゅーんじゃ?
05/3/2
ライダースクラブ誌に MGS−01のレース仕様「CORSA」の試乗記事が載った。 編集長はその魅力を大絶賛していた。

ストリップ写真は、以前の開発中の写真とは比べ物にならないくらい綺麗にまとまっていて、
そのまま保安部品をつけて公道仕様にしてもいいくらいの完成度。

ここまで造っておいて、公道仕様を造らないのはもったいなすぎる。
V11シリーズが生産終了になる。 MOTOGUZZIからスポーツバイクが無くなる。 でもそのままってことは無いだろうと期待したい。

ちなみにこの CORSA。 365万円のプライスがついている。 恐ろしい金額だ。
仮に保安部品が付いたらプライスは上がるのか、それとも各部のコストダウンで下がるのか。
目一杯下がったとしても、298万あたりが限界でしょう。 どちらにしても非現実的であることに変わりは無いな。
05/3/11



MGS−01が北海道モーターサイクルショウに来ることが分かったのは1ヶ月前。 この日を楽しみにしていた。
思えば1年半前、セローで行った東京モーターショウで見れるとばかり思っていたものを、現地では影も形も無くてハズされた。
はじめてweb上で見て以来、ずーっと憧れ続け、今日ようやく見れる。 2年半想い続けた文通相手と初めて会うっていう感じだ。

会場で対面したMGS−01は...
いやぁ〜素晴らしかった。 期待を裏切らなかった。完璧。文句のつけようが無い。カッコ良すぎる。

コンパクトでありながら、華奢な感じは全く無い。 出るところは出て、絞るところは絞る。
抑揚があってスリムな印象とグラマラスな印象が同居している。
スポーツバイクとしてのコンパクトさと、所有欲を満たすボリューム感が同居している

シャープなエッジが効いている外装デザインとゴツいエンジンの組み合わせも最高。 
このあり得ない組み合わせがちゃんと違和感無くまとまっているのですよ。
エンジンの迫力はスゴイ。 無骨なんだけど美しいのですよ。
最新の国産スポーツのような凝縮感もなければ最新メカっぽい感じもないんだけど...うーんなんて言えばいいんでしょう。
迫力があり、分かりやすくもあり、存在感があり、美しくもあり...うまく表現できない。
ただ、素晴らしい。 ホレボレする。 ずーっと眺めていても飽きない。

細かい部分も 隅から隅まで美しい。
エンジンの補機類も、ワークスっぽいトップブリッジも、流れるようなエキパイも、モノコックタイプのスイングアームも
一品モノ風のシートレールも、光り輝くフロントフォーク&ブレーキ周りも、タンクキャップさえも...
頭のてっぺんから足の先まで非の打ち所は無い。

ニーグリップ部はグッと絞り込まれているから、きっとまたがった感じはスリムなんだろうな。
ニーグリップ部がスリムに引き締まっていながら、下を向くとボリュームのあるタンクが目に飛び込む。
そして膝のすぐ前方に飛び出すシリンダーヘッド。 アイドリング時には車体が左右にブルブル震える。
どうですか? 想像してみてください。 素晴らしいじゃないですか。 ワクワクするでしょう?

これを見た後では、憧れていたMVアグスタすらも かすんでしまった...

もしコイツが自分の手に入るようなことがあったら、きっと自分は乗らないで車庫の中でずーっと眺めてるだろうな。
自分は 来場客の誰かが言ってた、「あ、MGSだ、●●君が欲しいって言ってたヤツだ」 というセリフにすら嫉妬する。
コイツは俺のモンだ!...いや、俺のモンにはならんだろうなぁ...
06/1/20 すっかり情報が入ってこなくなり、雲行きはかなり怪しかったMGS−01。
どうやらストリートバージョンのデビューは 本当にお蔵入りになったようだ。
でもゲッツィ&ブリアンから引き抜かれてMOTOGUZZIのデザイン&開発に携わるジョゼッペ・ゲッツィ氏は、
MOTOGUZZIのスポーツバイク開発を熱望しているらしい。
では何故MGS−01は開発をやめてしまったのだ? レース仕様がデビューし販売されたのだから、あと一歩じゃないか...