TAG HEUER (2006/03/19)

時計を買いました。

中学生になった時、腕時計を買ってもらった。
当時はデジタルが主流だった。 世界の時刻が分かるもの、電卓付き、過去と未来の何十年分のカレンダーが入っているもの…いろんなのがあった。
色々と調べて自分が選んだのは 当時水谷豊がCMをしていたCITIZENの「マルチアラーム」という名の時計だ。
とても気に入っていた。 1秒でも狂うと時刻合わせをしていた。 自分が一番時計に凝っていたのが この中学一年の時だ。

社会人になってから腕時計をしなくなった。 腕時計は 無いなら無いで何とかなってしまうものだ。
その後、2回ほど買ったことがある。 時計なんてなんでもいいと思ってるから数千円の安物だ。 でもすぐしなくなる。 うっとおしくて仕方ないのだ。

今回はちょっと無理していいものを買おうと思った。 安物だと又しなくなりそうだし、長く愛せるものを。
色んなブランドがズラリ並ぶ中で 気になったものの中にタグ・ホイヤーがあった。
展示されていたのは15万~30万くらいが主だったが、型遅れモデルで、12万のものが6万、15万のものが8万 というのがあった。

デザイン的にシンプルな8万の方をショーケースから出してもらい手に取ってみる。
「これオートマチックなんですよ。 お買い得ですよ」…「えっオートマチックって?」…「ゼンマイ式なんです。自動巻き。」
あぁ、だから針が止まってたんだ。 ちょっと振ってみると動き出した。
秒針の動きがイイ! クオーツと違っていかにもアナログらしい動きをする。 耳を当てると「チチチチ…」という音がする。 めんこい!
「クオーツのように正確ではないです。 一週間に1~2分狂います。 頻繁に時計合わせするのも味です。 ROLEXだって全てゼンマイ式ですから。」
「あと、数年に一度分解清掃が必要です。3万かかります。」
なにぃ~!
狂うのはヨシとしよう。 数年毎に3万は痛いなぁ~!

いまや国産ならソーラー電波時計(電池交換不要、時計合わせ不要)が2万以下で手に入る。
なのにコイツは値段が何倍のくせに 狂うわ金かかるわ イイとこないじゃん。
でもなぁ、 「安くて正確なのは国産」って事は最初から分かってる事だしなぁ、タグ・ホイヤーには憧れがあったしなぁ…
同じホイヤーでも6万の方はクオーツ。こっちの方が安いし正確なんだな。 でも8万の方の「手間が味」ってのも分かるしなぁ 秒針の動きがめんこいしなぁ…

悩みに悩んだが、ふと「これでなきゃいけない理由」っていう言葉が浮かんできて吹っ切れた。
「あ、決まったわ。 コレ。 オートマチック。 ゼンマイ式。 コレください。」

大いに迷う重要な決断に迫られたときに 「自分は何故コレを選んだのか」という明確な理由が見出せる方を選ぶべきと思ったのだ。
「値段が手頃で正確で」っていう理由で選ぶのなら6万のクオーツの方だけど でもそれなら別にタグ・ホイヤーじゃなくてもいいじゃん って思ったのだ。
ゼンマイ式の方は マメに合わせてあげなきゃいけないし、放っておくと止まっちゃう、っていう ずっと付きまとう手間が
逆に特別なものを持っているという実感に繋がる気がしたのだ。
そして その「味」と「手間」と「不器用さ」と「人間味」 が 自分が憧れているMOTOGUZZIとオーバーラップしたのだ。

20万以上の時計をしている人はザラにいる。 おそらく多くの人にとって8万の時計というのは安い方だ。
でも十数年時計をしてこなかった自分にとっては随分思い切った出費だった。
この秒針の動きはたまらん。 これをみるだけでコイツを選んで良かったなと思う。