安全こそ最高のテクニック (2006/9/8)

これは世界GPの頂点に立った経験もある往年の名ライダー ワイン・ガードナーの言葉です。
80年代後半のホンダによる安全運転を呼びかける広告に載っていたキャッチコピー。
「クラッシュと紙一重の走りをするレーサーが何を言っているのだ」と言うなかれ、この言葉はとても正しい。

レーサーは限界ギリギリの走りをする。でもそれはあくまで完走することが前提。
完走が第一。 そして次に勝つことを考える。 完走は二の次なんていうレーサーはいないはずだ。
年間通じて最も優勝回数が多いのにチャンピオンになれない、ということはレースの世界ではよくあること。
結局一発の速さを見せつけるよりも リタイヤすることなくコンスタントにポイントを得た者が最後に笑うのだ。

さてさて、
会話の中で、自分の口からも度々「攻める」という言葉が出てくる。
ただ、峠をハイペースで走るときも、実は自分の中に「攻める」という感覚があまり無い。
昔は、峠を走るときは 緊張したり、ヒヤッとすることが1回や2回はあるのが普通だった。 それは「攻め」ていたから。
でもここ数年は峠でヒヤッとした事が無い。
ピリピリと張り詰めて「挑戦」するのではなく、あくまで「楽しく」走る という風に変わったからだ。
言い換えれば 「どこまでいけるのか」 ではなく 「どこまでが楽しいのか、どこから先は楽しくないのか」 に変わったのだ。
自分の中で確保する安全マージンが大幅に増えたわけだ。

速さを競うのではないから、直線を飛ばす必要が無い。だから直線は流す。
精神的余裕が無くなる「直線で飛ばしてハードブレーキでコーナーに突っ込む」という事をしなくなった。
だから例えばヨーイドンで峠頂上までタイムを計ったとしたら、多分今の自分は昔よりも遅い。
だけどコーナリング中の「楽しさ」は遥かにUPしてると思う。 ヒヤッとする事も無いから走った後の爽快感も大きい。

当たり前の事だが、速く走っても事故ったら終わり。レースでも公道でも。
危険の臭いを嗅ぎ取る能力も含めて、やはり安全こそ最高のテクニックなんだろう。

自分はこれからも自分の走り方を崩さないようにしようと思う。 それが結果的に無事故に繋がってくれればと思う。
チームの皆さんにもお願いしたい。
峠は一人で走るよりも複数で走るときのほうが危険要素が多い。 速い人についていこうとせず、遅い人の後ろにピッタリつくことをせず
(後ろにつかれたプレッシャーで事故る例はとても多い。 追い越してあげるのもマナー)、
誰かと競う事をせず、他の人をあおりたてる事をせず、
自分の走りを守っていただきたい。