ポジション考 (2008/3/8)

アメリカン

現代のアメリカンはほとんどがロー&ロングで、昔のチョッパーとはスタイルもポジションもだいぶ違う。
アメリカンといえば「ふんぞりかえって乗る」イメージが強いが、
それはチョッパー全盛期に作られたイメージであって、実は今時ふんぞりかえるアメリカンは無い。

昔のアメリカンは本当に楽だった。
遠すぎないステップ、腕が大きく曲がるゆったりとしたハンドルポジション、段付きシートは背もたれ効果があった。
今はハンドルは遠くて低くて幅も広いから、上半身は直立で腕は伸びきる。
ハンドルだけでなくステップも遠いからおかしなことが起こる。 手と足を引っ張られて走ってるような姿勢になるわけだ。
当然その姿勢では後ろにもたれかかることもできない。

上半身でも下半身でもコントロールがしづらいし、上半身の体重が全部腰に来るから腰痛持ちの人は乗れたもんじゃない。
アメリカンが楽チンだったのは昔の話。 今やアメリカンは最も乗りづらくて疲れる不自然な姿勢のバイクになってしまった。
チョッパーが流行らないんだからしょうがないけど、足を投げ出すのであればハンドルはグッと手前に引かれているべき。
ハンドルが遠いのであればステップが手前にあるべき。
そして背もたれがあるのが最高。
今アメリカンは最も「理想のポジション」からかけ離れたところにいる。


ネイキッド

ネイキッドのポジションは直立からやや前傾する。 これが理想。
でも不思議な事に、ネイキッドに乗る人は そのままでも十分高い位置にあるハンドルを更に上げたがる。
ほとんどは跨ったときの印象でもうちょっと上げたいと感じるようだが、バイクは走るものなのだから、止まってる時より走ってる時の事を優先すべき。
走り出すと風とのバランスで、少々前傾しているほうが楽。

コントロールする場合にも軽い前傾の方が車体と一体になって好都合だし、スピードを出したときも同様。
上半身が軽く弓なりになってる方が路面のショックを上体のしなりで吸収できるけど、直立していると体重がモロにズドンズドンと腰を直撃する。
アメリカンと違ってネイキッドのポジションはメーカー出荷時でほぼ理想的になってるから 極力変えないほうがいいと思う。


スーパースポーツ

レプリカ全盛期の話だけど 「前傾が強ければ強い方がエライ」と言わんばかりに年々ポジションがきつくなって行った時期がある。
でも今のスーパースポーツはとても楽になっていて、どんな場面でも苦痛はほとんど感じない完成度の高さになってる。
スポーツするからって闇雲に前傾という時代ではなくなった。

ただ、シートだけは年々高くなっていた。
バンク角をかせぐためと、高い位置でダイナミックに体重移動するため。
そんなレプリカの常識に一石を投じたのが03年のDUCATI999。
そして05年のGSX-R1000に至っては女の子にすらオススメできる程の足つきの良さになった。
高けりゃいいってもんじゃない。 人間を重心に近い位置に置いて限界性能を出すという新しい考え方。
スポーツに対する今までの概念を打ち破った。 これは画期的なこと。
スポーツバイクを多くの人にとってより身近にした功績は大きいという意味でこの2台はエライ。


スポーツツーリング

ツーリングっていう名前が付いてるんだから当たり前だけど、一番疲れないのはやっぱりこのクラスだと思う。ZZRとかブラックバードとか。
軽い前傾、膝の曲がりも緩やか。 体への優しさではネイキッド以上と思える、全てのジャンルを通して「バイクの理想的なポジション」だと思う。

ポジションの話から離れるけど、最高速を意識するあまりカウルが小さすぎるのが難点。
でもカウルの設定は難しい。 大きすぎると風が巻き込むからだ。
背中に風が当たるというのは想像以上に寒い。 前に風が当たる方が耐えやすい。
多分背中は骨がすぐ近くにあるからだと思う。 背中に風が当たると文字通り芯まで冷える。
だからカウルやスクリーンがもうちょっと大きければいいのにって思うことは多いだろうけど、
実は前から適度に風があたってるくらいの方が もしかしたら理想なのかもしれない。