味ってなに? (2009/06/16)

例えばカメラ。
フィルムカメラからデジタルカメラになって、味が無くなったという声がある。
フィルム交換がいいんだとか、現像を待つ間の期待と不安がいいんだとか言われる。

例えばレコード。
CDになって音の厚みが無くなったとか無機質で人間味が無いとか言われてた。
針が埃を拾った時の「ブツッ」っていうノイズも、元々味なんかじゃなくて欠点だったはずなのに、CD登場後はアレが味だったとか言われる。

味って何なんでしょうね。
「新しい=味が無い」ってわけでも無いだろうし、「手間がかかる=味がある」っていうのも違うような…。

カメラで言えば、確かにフィルムカメラの場合、1回のシャッターにかける気合とか思いは
撮ったその場で確認できて何度でも取り直せるデジタルカメラとは格段に違うと思う。

CD登場当時、回ってる様子が見える構造のプレイヤーがいくつもあった。
レコードは丸見えだし、カセットテープも回ってる様子が見えたから、見えなきゃいけないっていう先入観があったのかもね。
それ見るとね、CDってすごいスピードで回ってるんだよ。
あれは確かに人間味は無い。レコードのゆったりした回転はいいなぁって思う。

レコードの時代は針の交換ってのがあったよね。安いのでも当時で\1,500くらいだったかな。
新しくするとはっきりと音が良くなった。
ダイヤモンド針とかプラチナ針とか色々種類があって、高いのは超寿命で音も良かった。
何かをする事によって変化が体感できたわけですね。

あとレコードプレイヤーの下にコンクリートブロックやら専用のゴムなんかを敷いて、余計な振動が伝わらないようにっていう事もしてた。
CDの場合消耗品の交換って無いし、下に何か敷いても多分何も変わらないと思う。
つまり何かをする事による変化を期待できない、っていうか働きかけが出来ないものなんですね。

同じ工業製品でも「冷蔵庫の味わい」だとか、「二層式の洗濯機は奥が深かった」とかいう話にはならないから、
「味」って言うのはもっぱら趣味性の高いもの専用の言葉なんでしょう。

工業製品の進化=極力人間が何もしなくて済むように=生活の豊かさ っていう方程式が成り立つから
やっぱり味っていうのは時代に逆行したものの象徴なのかもしれませんね。

人間が何か働きかけた結果何かが返ってくること=趣味性=味 っていうことなんでしょう。
この二つの方程式を解くと、
新しいもの=味が無い、古いもの=味がある という回答が正解になってしまうなぁ…。

現代は味が無い世界、そしてこれからも味の無い世界にどんどん突入していくんでしょう。
まぁ無気力無感動無味無臭な現代人が支配する今の世の中ですから、ちょうどいいバランスなのかもしれませんね。