86年 日本最北端のラーメン屋を求めて北へ

高校生のころ、「卒業したら中免を取って250を買ってツーリングに行こう」と約束した3人。
それぞれが憧れていた、FZ250PHAZER、GPZ250R、VT250INTEGRAの3台で...。
そして大学に入って初めての夏。
一人は親の反対で免許を取れず、もう一人はとりあえず原付免許を取って新車のMTX50Rを買い、
自分は中免は取ったもののお金がなくて、格安で譲ってもらった古ーいMTX50に乗っていた。
かくして最新250cc3台のはずだった初ツーリングは新旧2台のMTX50という形で実現した。
目的地は稚内の知り合いの家。
途中は寝袋ひとつで野宿。
何もノウハウを持たず、装備もアマイままに飛び出した。

憧れていたピースサイン。記念すべき初ピースは、こちらからおもいっきり出そうと思っていた。
しかしいざバイクが近づいて来た時、ドキドキしてしまって結局初ピースは控えめな返事で終わってしまった。
野宿。適当な野原を見つけて寝袋に入って転がった。
星空を眺めながら寝る。「ツーリングってなんて素晴らしいんだろう」と思った。
きっとこの瞬間に自分は旅人間になったのだろう。

朝3時ころ、雨が顔にあたって目覚めた。あわてて荷物をたたむ間に土砂降りに。
雨の装備はレインウエアのみ。すぐに靴の中が大洪水。
非難のために入った旭川駅はよりによってラッシュ時。
ズブ濡れで人ごみをわけ、トイレで靴下を絞る。
稚内に行く前にどこかでもう一泊の予定だったが、この土砂降りでは野宿はできない。
一日早く知り合いの家に行く事にした。電話をしてもつながらないまま...


稚内の知り合いの家に着く。しかし誰もいない。
その日は帰ってこなかったため、玄関の前で寝袋に入った。
階下に住むおばちゃんが心配してくれて、
「うちで寝てってもいいよ」といってくれたが丁重にお断りした。>

朝、新聞配達の兄ちゃんが玄関前に寝袋で転がる2人組みを見て驚いていた。(そりゃそうだ)
昨晩のおばちゃんが、なんと朝ご飯を準備してくれていたので、
おじゃましてごちそうになった。風呂にまで入れてもらった。
世の中には親切な人がいるものだとしみじみ。


おばちゃんが作ってくれたおにぎりをもって宗谷岬へ。
今回のテーマである伝説の「最北端カニラーメン」は、
カニのはさみが放射状に8本並んでるだけだった...。
岬では他の旅ライダーにかたっぱしから声をかけていっしょに写真を撮った。

稚内へ戻る海沿いの道で、体が風にとける感覚を体験した。
自分は初めて「風になった」
街中を走ってるだけの人は風になったことがないにちがいない。
スピードを出すことが風になることじゃない。
体が風と同化すること。
自分はわずか時速30km/hで風になった。
特別な経験だった。

稚内に戻り、今度は無事に知り合いの家にとめてもらうことができた。
3日ぶりの布団は妙にありがたかった。

札幌-稚内往復の4泊5日初ツーリングは無事に終わった。解散場所はバイクには全然興味のないM君の家。
ジュースで乾杯し無事を祝う。

ある雑誌に「ツーリングに出たらきっと君は一回り大きくなって帰ってくるだろう」と書いてあった。
M君に「俺、大きくなって帰ってきたか?」ときいたら、「小汚くなった」と言われた。

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